「そういえば佐渡さん、車持ってたんですね。」
今まで全然知らなかった。
「こんな素敵な車を持ってるのに、なんであんなに窮屈な乗り物に毎日乗ってるんですか?」
この車は、満員電車とは比べものにならないくらい快適なのに。
「役所の駐車スペース使えるのは部長補佐級からなんだよ。」
「係長は部長補佐よりも下なんですか?」
本気でそう聞いた私を、横目で見た佐渡さんは少し脱力したように答えた。
「当たり前だろ。係長なんて、ペーペーと変わらないよ。まあ公務員は、年数が経てばそれなりの地位は貰えるがな。」
なんだか詰まらなそうにそう言う佐渡さんは、これ以上この話をしたくはないらしく、突然話を変えた。
「そういえば、アイロン以外に欲しい電化製品はないのか?」
「えーっと、炊飯器は4月に買いましたし、洗濯機は一人暮らしを決めたときに買ってましたし。今のところは、アイロンだけで大丈夫です。」
「炊飯器は買ってなかったのに、洗濯機は買ってたのか。」
「…はい。」
今となっては分かる。その優先順位の間違えに。
世間知らず全開だった数ヶ月前の私は感覚で電化製品を揃えた。
絶対、洗濯機より炊飯器のほうが必要だよね。
まあ、そこに気付けるようになっただけでも、少しは世間知らずから脱せているのかもしれない。

