胸の痛みを堪えながら佐渡さんの背中を追って行くと、ついたのはマンションの駐車場。
ピッと音がして光を放ったさきを見ると、そこには佐渡さんのだと思われるセダンタイプの車が1台。
見方によっては黒っぽく見える濃紺がなんだか佐渡さんらしい。
自然な所作で助手席を開けてくれた佐渡さんに、運転手付きの車に乗っていた私は懐かしさを感じてしまった。
車内には、心が落ち着く優しい匂いがした。
佐渡さんの部屋の扉を開けたときに感じる匂いと同じ、ウッディな匂い。ひのきの匂いだ。
静かに走り出した車は、マンションの敷地内を出て公道に乗った。
「佐渡さん、この車は何という車ですか?」
「bmw。」
「やっぱり。うちの父が通勤用に使っている車と一緒です。」
この車に乗ったとき、何となく、『知っている』と思った。
なんだか似ているな、と思ったら本当に同じ車だったらしい。
「いや、同じじゃないと思う。」
「え?」
「bmwもピンキリだからな。多分全然値段は違うと思う。」
比較的安いやつだからな、これは。と苦笑い気味で佐渡さんはそう言った。
けど。
乗り心地はすごく良いのにな。
でも、言われてみれば確かに形が違う気もする。

