「そう、見えますか?」
「なんとなく。」
ようやく煙草に火をつけた佐渡さんは手摺に身体を預け、目を逸らして言った。
なんで、分かるんだろう。
会話という会話もしてないのに。そんなに私、だだ漏れだったのかな。
遠くを見つめるその横顔を盗み見る。
そこにあったのは、いつもと変わらない佐渡さんの横顔。
それだけなのに、なぜか妙に安心してつい、話してもいいかな、そんな気分になってしまった。
「実は、仕事で失敗しちゃって。」
「失敗?」
「はい…。保護者の方を間違えて、違うこどもさんの話をしてしまったんです。」
自分で言うと取り返しの付かないことをしたんだなって改めて思わされる。
震える唇を片手で軽く押さえながら続きを紡いだ。
みつる君のお母さんを怒らせてしまったこと。
言われてしまったことも全て。

