扉は背後で閉まり、電車は私たちを残して行ってしまった。



「佐渡さん、どうして…。」



電車から出られなくなってしまった私を引っ張り出してくれたのは、なんと佐渡さんだった。


いつのまにか前に居た佐渡さんは、私と一緒に電車を降りてしまった。


確か、あと3駅先だと言っていたはずなのに。


「俺は次ので間に合うから。いつも早目に出てるんだ。」

「それでも…。」

「いいから、早く行け。」


そう言った佐渡さんに背中をポンと叩かれ、一歩前に出る。


「頑張ってこい。」


振り返ると、佐渡さんが力強くエールを送ってくれた。


「ありがとうございますっ!」


私も佐渡さんの3倍力強くそう言って、深く頭を下げると前を向いた。


佐渡さんが叩いた背中は、なんだか熱くて。

そこからパワーがみなぎってくるようだ。


よし、頑張ろう。


そう心に誓って、自分の足で前へと踏み出した。