「大変お待たせしました。案内が至らずに申し訳ございません。」


座ったまま頭を下げるのは、綺麗なお姉さんに案内されて座ったブースに居た、濃いグレーのスーツを身に纏った男性職員さん。


背筋をしゃんと伸ばしたまま綺麗に倒されたお辞儀は完璧だ。


「いえ、声をかけて頂けて助かりました。どうか、頭をお上げ下さい。」

「恐れ入ります。」


そう言って姿勢を整え、真っ直ぐに私を見据える彼はなんというか、隙がない。

正直、さっきの綺麗なお姉さんが良かった。というよりも、女性職員さんが良かったな。


女子校、女子大育ちの私にはいきなりハードルが高すぎる。


「今日はどのようなご用件でしょうか?」


胸にあるネームプレートに『住民係 係長 佐渡』とかかれている。


佐渡さんは、整った顔立ちをしていて、アーモンド型の魅惑的な目と筋の通った鼻。少しカサついたくちびるは、所謂イケメンという部類に入るのだろう。


でも、その銀フレームの眼鏡の奥の瞳は冷たい。そんな気がする。


なんて。私の勝手なイメージだけど。