「私は櫻木製薬の発展と同時に、菖蒲の幸せを願っているんだ。
菖蒲が選んだ男が、この会社を継いでいいと言っている。この縁談を反対する理由がない。」

「お父さん…。」


そんな思いもあったんだ…。


「まあ、佐渡君の力量もわからないからな。長門君には、これまで通り部長職として頑張ってもらう。」

「…はい。」


前へと出てきていた長門さんは、渋々と言った感じで引き下がる。


そんな話を、頭が回らない私はふんわりと聞いてた 。



ーーーーーコンコン。

思い空気が漂う社長室に、扉を叩く軽い音が響いた。



「ーー社長、申し訳ございません。約束のお時間になりました。」

「ああ、行こう。」

「え、ちょっと待って。」