隣の部屋と格差社会。



すごく今更、だ。


こんなこと最初からわかっていたはずなのに、今更その重みに気づいた。


今まで逃げ続けていたけど、腹をくくるときが来た。


幸い、私の旦那さんになる長門さんは仕事を続けていいと言ってる。


好きな仕事ができる。


これ以上なにを望むの?



『好きな人と結婚したい』



頭に浮かんだその望みを、その人の顔を目を強く瞑って掻き消した。


好きな人と結婚する。

すごくすごく難しいことだ。それは、私のような立場の人間じゃなくても。


その難しさをこの半年で痛いほど学んだ。


好きな人の好きな人になることは、すごくすごく難しい。


好きな人。


その単語で頭に浮かぶのは、やっぱりいつだってたった一人で。


でも、その人と結婚できる保証がどこにある?


振られている私に、可能性なんて0に等しい。


櫻木製薬を捨ててまで、望むこと?