「申し訳ありませんが、私長門さんとは結婚できません。」
私と長門さんと運転手さんの3人だけの櫻木製薬を目指す車内。
この5日間で何度言ったか分からない台詞を口にした。
閉じ込められて5日間、長門さんは毎日父と共にうちへと帰ってきた。
長門さんを交えた夕飯の際、父からの結婚しろ攻撃はものすごくて居心地の悪さったらない。
そんな中、いつも笑顔で私に気を遣ってくれていた後部座席で隣に座る長門さんは、それを聞いてもぴくりともしない。
あまりにも反応がないから、怒らせてしまったかと少し焦りだしたとき。
「菖蒲さん、あなたは櫻木製薬がどうなってもいいとおっしゃるんですか?」
突然私に視線を合わせてそう言った長門さんの表情は、いつもと同じ。
少し目尻が下がっていて、柔らかな表情をしている。
なのに。
「お嬢様も立派な『社会人』なんですから分かりますよね?」
その声は威圧的で、ただ黙り込むことしかできなかった。

