「避けるなよ。」


いつもは心地良く感じる佐渡さんの低音も、今日に限っては心地良くなんてない。

逃げたい。


そう思うけど、だんだんとにじり寄ってきている気がする佐渡さんは、全然腕の力を緩めてくれない。


「…避けて、ないですよ。」


嘘、思いっきり避けてます。ごめんなさい。


「避けてるだろ。」


ああ、やっぱりそんなバレバレの嘘通じないか。


「取り敢えず、目を合わせろ。」


その強引さは、お見合いの帰りに迎えに来てくれたときみたいで。


頭上から聞こえた少し圧を感じる言葉に、もう従うしかなくて恐る恐る顔を上げる。