隣の部屋と格差社会。




このままだと煙草を1箱吸い切るんじゃないかと思い始めたころ、ホテルから出てくる彼女らしき影を見つけた。


肩を落とし、ため息をつきながら歩いていた彼女は、車と俺の姿を目にすると、かなり驚いた。


無理もない。


俺自身も、なぜここに来たのか未だに分かってないのだから。


『帰るぞ。』


そんな素っ気ない一言しかでない俺に、嬉しそうに礼を言う彼女に、胸の奥底が熱くなる。

咄嗟に胸を押さえた。奥底から何かが溢れ出そうだったからだ。



そんなことを考えていたから、なんで来てくれたのかという問いに、つい心の声が出てしまった。


放っておけない。


それは、彼女が誰かに似ているからとかそういうことではなくて。

彼女が彼女だから。