困ったことがあれば、いつの間にか擦り寄られて。いつの間にかそれを嫌と思わない自分も居て。
満員電車で中年おやじに密着されただけで、息もできずに震えている彼女を、身も捩れずに耐える彼女を放っておけなかった。
困っていたから助けただけだ。
それだけなはずなのに。それだけでいいはずなのに。
それだけではない何かが湧き始めていた。
しかし、そんなことを簡単に認められはしない。
水道を止められ、窮地なはずの彼女が言った『自分で稼いで生きていくことにワクワクする』という発言に、一番下の妹 灯(あかり)が重なった。
兄妹たちみんなから可愛がられて育ったせいか、人に頼るのが上手い灯に周りはいつもいつの間にか手を貸していた。
そうか、灯に似ているから彼女を放っておくことが出来ないのか。
そう、思うことにした。

