隣の部屋と格差社会。




私が立ち入っていい話じゃないのは分かってる。


美奈子さんに『頑張る』なんて言ったものの、実際に佐渡さんにこの話を振ってみると、触れて欲しくないとひしひしと伝わってくる。

ただの隣人、それも振られた分際で。


でも、やっぱり確認したかった。

佐渡さんにとっての幸せを。佐渡さんの思いを。



「俺があいつらの幸せを壊したんだよ。俺が、あいつを殺したんだ。」



長い長い沈黙を破り、唸るような声でそう言った佐渡さんの手は震えているように見える。


「俺に幸せになる権利なんてないんだよ。」


やっと聞けた佐渡さんの本心。

それは聞いてるだけで胸が張り裂けそうになるくらいの想い。


それを聞いて込み上げて来るのは、悲しみと苦しみ。

そして、悔しさと怒り。