私の口から二人の名前が出たことに相当驚いているらしい佐渡さんは、怪訝そうな顔で私を見上げる。
「私、恵美ちゃんの通っている保育園で働いてるんです。」
目を見開いて、そのまま固まってしまった佐渡さん。
驚くのも当たり前だ。
考えてみたら、今まで勤めてる保育園の名前を出したことはなかった。
私も、佐渡さんの部屋のバルコニーで恵美ちゃんと会ったときには相当驚いた。
「この間、佐渡さんの部屋に居た恵美ちゃんと偶然会って、それから美奈子さんに私のことがバレたみたいで。
美奈子さんから色々聞きました。」
「…恵吾のことか?」
「はい。」
足に腕を乗せ、組んだ手で顔を伏せてしまった佐渡さんから少しくぐもった声が聞こえる。
その声は、いままで聞いたことないくらいに低かった。

