隣の部屋と格差社会。




「…佐渡さんは、今も美奈子さんのことが好きなんじゃないですか?」

「ううん。」


一つの可能性を窺うように聞くと、すぐに否定されてしまった。


「佐渡君は私のこと好きじゃないよ。義務みたいなものなのよ。うーん、違うか。贖罪、かな?」


贖罪…。


「でも、私も悪いの。つい、甘えちゃってさ。
仕事でどうしても恵美を見れないとき頼ったりしちゃって。手を掴んで離さないのは私の方。
結局私は、竜一君の優しさに漬け込んで甘えてるだけなの。」


そんなことない、そう言いたいけれど、声が出ない。

そう言えるだけの強さが私にはなくて、ただただ膝の上に置いている自分の手をぎゅっと握りしめるしかなかった。