「ケリをつけるために言っただけだからって苦笑いする竜一君に私も笑い合って、お互い幸せになろうねって誓ったの。なのに…。」
今まで、穏やかに語っていたはずの美奈子さんの表情が急に曇る。
「恵吾が事故に遭ったのはその日の数日後。」
エアコンが壊れたんじゃないかと思うくらいに、一気に温度が下がった気がした。
「今夜は竜一君と飲みに行くって家を出て、行く途中に事故に巻き込まれてね。
4日間生死を彷徨ったけど、結局ダメだった。」
「美奈子さん…。」
大丈夫よ、と心配してしまう私のために温かい笑顔でそう言う美奈子さんに母の温もりを感じた。
そして、何もできない自分の無力さを感じる。

