隣の部屋と格差社会。



「恵美ちゃんは?」


「恵美は今、英会話教室に行ってるの。」


平常心を取り戻すため、取り敢えず質問してみるが、そんなに簡単には取り戻せない。


どうすれば取り戻せるか考えていると、2人分のアイスコーヒーが来てしまった。

目の前に置かれた真っ黒い飲み物は、いかにも苦そうだ。


緊張して喉がからからだけど、コーヒーを飲む気にはなれなくて、お冷を頼もうとしたとき、


「ねえ、菖蒲先生って竜一君の隣に住んでるって本当?」


恵美ちゃんのお母さんが本題に触れた。話とは、やっぱりそっちの話だったらしい。


『竜一君』とは佐渡さんのこと。


その呼び方に、距離の近さを感じて胸がずきりと痛んだ。