隣の部屋と格差社会。



ふとテーブルの上にあるパンケーキを見ると、上に乗った紫芋のアイスがどろどろに溶けてしまっていた。


あぁー、溶けちゃった。


綺麗なきつね色だったはずのパンケーキは、見事に紫に染まってる。


ナイフとフォークを刺すと、その柔らかさが分かる。

もう、べちょべちょだ。

でも、溶けたアイスが染み込んでいて、これはこれで美味しいかもしれない。


そう思って口に入れるけど、うん、やっぱり溶ける前に食べきるべきだったと実感する。


ミルクティーと共に、騙し騙し口に入れようやく最後の一口だ。


食べ終わったら、どうしよう。買い物でもして帰ろうかな。


時計を見ると14時過ぎ。


最近の休日は、物思いにふけるうちに終わってしまい、かなり無駄に過ごしている。

このままじゃダメだ。

ちゃんとそう思っているのに、なかなかこの迷宮から抜け出せない。


本日何度目かの深い深いため息を吐きながら席を立とうとすると、私を真っ直ぐに見つめ近づいてくる人影に気づいた。

あ、あれは。


「菖蒲先生、ですよね?」


あっという間に目の前に立った人物は、今日も綺麗で凛としている。


「恵美ちゃんのお母さん…。」


口から出た言葉は、すごくすごくか細くて震えていた。