「はあぁ。」


あの日以来何度目になるか分からないため息は、深くて長い。


「菖蒲先生、どうかされました?」


一緒に遅番として保育園に残っていた晴日先生の声で、ここが仕事場で帰る前のお掃除中だということを思い出した。


だめだ、最近気を抜くとすぐにこの前のことを考えてしまう。


「なんでもないよ。」

「いや、今のため息は尋常じゃなかったですよ。すんごい長かったですし。」


聞かれていたらしい。うぅ、誤魔化せそうにない。


「そうだ!今日給料日ですし、焼肉でも行きません?」


ぽん、と手を叩きそう晴日先生が言うので反射的に壁の時計を見る。


現在、19時50分。


焼肉には、少々、いや大分遅い時間帯。


でも、話を聞いて欲しい。


そんな思いが勝ってしまった。


「うん、行こっか。」