隣の部屋と格差社会。




「おう、菖蒲。来たか。」


個室に入ってすぐに飛び込んできたのは、4ヶ月ぶりに見る父の姿。


すでにシャンパンらしきものを手にしているお父さんは、私が来たことに何の驚きもない。


行くなんて、一言も言ってないのに。

むしろ、『お見合いなんてしない』って豪語したはずなのに。


なんだか父の思い通りに動いてるようで胸がもやっとしてきたけど、顔に出さずに席に着く。


軽く宴会でも出来るんじゃないかと思うほどの広いこの個室は、片面がガラス張りになっていて青空と、下にはたくさんのビルが見える。


すごい、空に浮いてみるみたい。


じゃなくて。

しまった、つい久しぶりの世界に浮かれたけど、今は感動してる場合じゃない。


気を取り直して、目の前にいる二人をみる。

私が家を出るとき、激怒していた人とは同一人物とは思えないほど上機嫌な父の隣には見たことのない男の人。


もしかして、この人がお見合い相手…?


にこにことお父さんの話している彼は、少し目尻が下がっていて、すごく温厚そうな人。


歳は、佐渡さんと同じくらいかな。


不躾にも、まじまじと観察していると、父が口を開いた。



「彼は、長門 琢磨 (ながと たくま)君。我が社の期待の星だよ。」



そう言われた長門さんは、いやいや、そんなことありません、と謙遜し私に視線を移したのでようやく目が合う。