距離0センチ




夜の空気が気持ちいい。


周りに高いビルはないから、全体を見渡せる。




私はスタスタと柵まで行き、棒を掴んで外を眺めた。



そしたら後ろから、立花君の控えめな笑い声が聞こえたから振り返る。




「なに笑ってるの?」


「いえ、紫乃先輩の行動がいつかの屋上のときと似ていて」


「そ、そうだっけ?」




そういえば、昼休みに立花君と屋上に行ったときも、なんとなくフェンスまで行って外を眺めたかも。


よく覚えているなぁ。



なんて感心していたら、
立花君は柵を背にしている私の顔の横に、左手を伸ばした。