ホタルと夏の空



パンッ。




「すぐわかったか?」




「はい、わかりました」






カバンとスーツのジャケットを片手に持った先生が車のドアを開けた。







「じゃあ行くか、桜川だったよな」






ハンドルを握って、エンジンをつける先生の言葉にあたしは頷いた。





…やっぱりかっこいい。横顔もハンドルを握る腕も。





うるさいな、あたしの心臓。そんなにドキドキしないでよ…。





あたしは、ギュッと手に力を入れた。






「男の車乗るの、初めてか?」






走り出した車内で、先生と2人きり。ダメだ、あたし。平常心でいけ。







「…初めてじゃないですよ」





「へぇー、意外だな」





「まぁ、お父さんですけど」






あたしが、返した返事に先生はカクッとかる。






「お父さんかよ。それカウントするか?」





「お父さんだって、男です!一応……」





「一応をつけるな、お父さんがかわいそうだろ」






そんなくだらない会話に、2人で笑い合う。




何の話してたんだ、って。