ホタルと夏の空



「だから、美人って言われることも告白されることも今でもちょっと怖いです」






『昔のことなんですけどね』




なんて、笑いながら教科書を持って立ち上がった。






「すいません、つまんない話をベラベラと。



帰ります!ありがとうございました」







あたしは教科書を手に持って、先生におじきをした。





なんであんなこと先生に言ったんだろう。





気づいたら勝手に言葉が出てた。…昔のことそんなに気にしてないってことだよね。






前のドアから出て、階段のほうへ向かって歩くと






「電車で帰るのか?」





「え?は、はい。電車ですけど…」






先生が変なことを聞いてきた。ちょっとびっくりした。






「最寄りは?」





「桜川です」






「よし、じゃあ今日車だから送ってやるよ」





「…えぇっ!?」






さっきの変な質問をした理由はこういうことか…。





車で送ってもらう、ってありなのか?






「なんだよ、その反応」






「いや、そういうのってマンガとかドラマの世界だけだと思ってたから…」






「あのな、俺は下心じゃなくて優しさで言ってんだよ。




勉強する時間を少しでも長くしてやるための、優しさ」






『電車より車のほうが速いだろ』




と、いって先生はあたしに車のキーを投げた。