「それより、久しぶりだしさ…ちょっと話とかしない?」



僕より背の低い里奈は、僕の顔を下からマジマジと見てきた。


僕と里奈の横をスイスイと避けながら歩いて行く歩行者


おそらく通行の邪魔になっている事だろう。


僕も、この通行人に紛れて立ち去りたい気持ちになった。


「ねぇ…ダメ?」


何も返事をしなければ、里奈は自慢の武器を繰り出してくる。


昔から、いつもそうだった。


この甘えるような、雨が降り、ダンボールの中で

『誰か助けて下さい!』

と、訴えてくる猫のような目で…


「話?今更、何の話があるんだよ。」


一瞬、その目にやられてしまいそうになった。


しかし、視線を逸らす事で、何とか逃れた。