先生が、僕の方へと歩み寄って来る。


どうしたら良いのか分からない。


いつもなら、すぐに逃げ出してしまうはずなのに、足が動いてくれない…。


どんどん、近づいて来る先生。


近づけば近づく程、心の鐘が早く、どんどん早く。


「井手君…。先生は…」


甘い香りが、風を通して僕の方へ…。


先生の黒い髪が、風で揺れた。


「それ以上は、言わないで下さい。」


聞きたくない、聞かなくても分かってる。


『先生と生徒』


先生は、そうとしか思っていないのは分かってる。