何度かよろめいては、テーブルに手をかけて堪えようとする母さん。


ニコっと笑いながらも、顔を歪めて辛そうな表情を見せる。


「母さん…その傷…どうしたの?」


自分の頬に手をあてて、もう一度母さんに尋ねてみた。


雪のような白い肌の持ち主である母さんの右頬が、明らかに変色して若干、唇の端の方から血も…



「亮…もう、お母さん…お母さんね…我慢の限界かもしれない…」


そう言葉を漏らすと、母さんは椅子に崩れ落ちるように座って顔を両手で覆い隠した。


そして、僕の前で声をあげて、体を震わせて、泣き出した。


突然の母さんの言葉と、泣き声に僕は戸惑った。


母さんが泣く姿を初めて見たからかもしれない。


今まで、ずっと笑顔を絶やさなかった母さんの顔に、涙がたくさん流れ落ちていく。