少しは外の空気を吸いたくなって、

お日様がてっぺんに登ったお昼時。


ご飯をろくに食べずに、王子様は病室を脱走しました。


非常階段を上って、屋上に出ていきます。


こんな腐った病院でも、屋上の扉を開けたときの解放感はたまりません。



大きく背伸びをして、光の世界を満喫します。


すると彼の視線は前方へ。


そこには、昨日出会った少女がいました。


少女は高いフェンスの先の青い空を見上げています。


王子様は彼女の笑顔が忘れられず、


珍しく自分から話しかけようと近づきました。


少女が振り向いて、挨拶しようと手を上げます。


ですが少女は、呆然として言いました?

「誰?」


あなたはだあれ?


王子様はしばらく動けませんでした。


少女の表情を見、自分の頬をつねりあげ、



一目散に駆け出しました。


可哀想な王子様。


とうとう影も顔も薄い人に成り下がったのでしょう。


彼は青ざめながら、階段を三段飛ばしで降りていくのでした。