けど…このままここにいたら、咲輝にひどいことばっかり言っちゃう。
頭を冷やそう…。
「…ごめんっちょっと外出てくるっ…」
【ガシッ】
部屋から飛び出そうとしたあたしの腕を、咲輝はしっかりとつかんだ。
そんなことでさえも、ドキッとなる心臓。
咲輝病だ…あたしは。
「芽衣…黙っててごめん…」
「…」
咲輝があたしに頭を下げる。
あたしって、なんでこんなにわがままなんだろう…。
今、咲輝があたしに謝ってくれたのに。
なのに、謝らないでよって思ってる。
「…ちゃんと芽衣に紹介するべきだった、隠しててごめんな」
ちがう…。
そんなこと言って欲しいんじゃない。
「それは誤解だ!」って言って欲しかったの。
それで、本当に好きなのはあたしだって。
ずっとずっとあたしだって言って欲しかった。
「実は…俺から告白した。それで…」
「もうわかった!!!」
もう耐えられない…。
胸が痛くて、頭がいたい。
この症状、最近多い…。
「咲輝が幸せそうでよかった!…咲輝が隠れて幸せそうなのがうらやましかったのっ!非リアだからさ〜あたしは」
頑張れ、あたし。
笑顔を作るんだ。
泣くな。
「ちゃんと挨拶させてよ~?咲輝とお母さんですって!」
咲輝を軽く叩くと、そこにはいつもよりずっと嬉しそうに笑う咲輝がいた。
「何が母ちゃんだよ!ばーか。まあ、ありがとな!芽衣!」
「…事実じゃんか!息子!」
「息子じゃねーし!よし。飯だめし!」
咲輝は、元気に部屋から出て行った。
その瞬間、足の力が抜けた。
悔しい気持ち、嫉妬。
そーいう気持ち、全部なくなっちゃえばいいのに。
苦しくて、苦しくて。
咲輝の笑顔が嫌いって思ったの、初めてだ。
切ないっていうより、もっと…。
もっと醜い感情。
由宇先輩になりたい。
咲輝があの笑顔を向ける相手が、あたしになりたいよ。

