ビジネスホテルばかり利用している私にとって、通された部屋はちょっとびっくりするくらい広かった。
ダブルベッドの他に、ここでもう2人くらいは余裕で眠れるんじゃないかっていう大きなソファーとテーブル。
私は電気屋さんでしか見たことないレベルの大きなテレビ。
間接照明だけの暗い室内からは、東京の夜景が強烈に見えた。
「・・・これってスイートルーム?」
「いや、まさか。セミスイートだったよ」
「一体ここいくら!?こんなところに一人で泊まるつもりだったの!?」
まさかこの展開を予想していたのかと、詰め寄った。
「土曜日で安いところは埋まってたんだ。それでもホテル自体は高いところじゃないし、そんなにしないよ。最初は僕もびっくりしたけど、こんなことになるんだったら結果的によかったな」
間近でみたトモ君は、薄暗い間接照明のせいなのか、遠い別人に見えた。
「私、お風呂入ってくる」
なぜか悲しげに揺れる目から逃れたくて、私はバスルームに逃げ込んだ。
お風呂ではメイクも落として口の中まで何度も洗った。
脚は皮が剥けるくらいゴシゴシとこすった。
それでもあの這うような手の感触が消えない。
ヌルヌルとしたキスが抜けていかない。
体はさっぱりしたのに心の中はまだベタッとしたままバスローブ姿で部屋に戻った。
「僕もお風呂に入ってくるから、芽実ちゃんは先に寝てて」
トモ君は入れ違いでバスルームに入っていく。
一人、パリッと糊の効いたシーツに入ってこれからのことを考えた。
真幸の手垢の付いた体を持て余している。
蹂躙される恐怖が抜けなくて一人でいたくなかった。
だけど、その相手はなぜトモ君だったのだろう。
あの時目の前にいた、というだけでないのは確かだった。
好きでもない男という点では、トモ君だって真幸と一緒。
むしろ真幸の方が何度も身体を重ねているのだから、一回や二回増えたって大差はないはずなのに。
今夜を越えたら、私とトモ君の関係は変わってしまうのだろうか。



