とろんとした玄米茶は、もうだいぶぬるくなってしまっていた。
それに気づいた美弥子さんは、別の湯呑みに新しくほうじ茶を淹れてくれる。
「熱っ!やけどしたー!美弥子さん、お湯沸騰させすぎじゃない?」
「あら、ごめん。こっちで舌を冷やしたら?」
片づけようとしていた冷めた玄米茶が再び戻ってくる。
仕方なく一口飲むとヒリヒリが少し落ち着いた。
けれど、私の渾身の自白がドタバタにまぎれてしまった。
「別れられたの?」
ほうじ茶と玄米茶を交互に飲む私に、美弥子さんが聞いてきた。
「うん。実家に帰るって言ったら『それじゃあ仕方ないね』ってあっさり」
ギリギリまで私の部屋に通ってきたけど、それ以来ぱったりとメール1本来ない。
つくづく、愛されていなかったんだなあ。
実家に帰りたいと母親に電話したら、
『え!?帰ってくる家なんてないわよ!?』
とこっちが驚くような発言をされた。
父親の転勤が決まって、ずっと住んでいたアパートを引き払うらしい。
当然私が帰る場所もない。
1年か2年、と言われても待てる状況じゃなく、
『美弥子さんの家に住まわせてもらったら?あの家なら空き部屋もあるだろうし』
ということで、生まれ育った実家から高速で1時間の祖母の家に身を寄せることになったのだった。



