しばらく歩いてタクシーを拾い、ホテルの名前を告げる。
その間もずっと私はトモ君の腕を掴んでいた。
少しでもゆるめたら、離れていってしまう気がして、自然と力は強くなっていく。
トモ君はずっと何も言わなかった。
だけど、ホテルの前に着いたとき、さすがに彼は足を止めた。
「芽実ちゃん、僕はここまでで」
「あ」
当たり前のように一緒にホテルに帰ってきてしまったけど、一緒に入って行くわけにはいかなかった。
でも、今はどうしても離れたくない。
この気持ちの理由はまだ考えたくないけど、そう思っていることだけは確か。
それをそのまま口に出すべきか迷ったまま、ただ心のままにトモ君のシャツを掴んでいた。
「中に入るまでここで見てるから、もう行って」
そう言ってトモ君が私の手をシャツからはずそうとしたので、強く握り直した。
「芽実ちゃん?」
「━━━━━いて」
「ん?」
「今日はずっと一緒にいて」
下を向いたままだからトモ君がどんな顔をしているのか見えないけど、ものすごく動揺しているのはわかった。
これがどういうことを意味しているのか、もちろんわかって言っている。
「━━━━━それは、無理だよ」
トモ君は私が望めば何でも叶えてくれると思ったのに、思いがけなく拒絶されてしまった。
「なんで?嫌?」
「嫌なわけない」
「じゃあ何?」
「芽実ちゃんは今、ものすごく弱ってるでしょう?お酒も飲んでる。絶対後悔すると思うんだ」
それは否定できない。
自分が今冷静じゃないことは、冷静じゃない頭ですらわかっているから。



