「あ、ガーターつけたらいけるかも。ちょっと透けるかもしれないけど、生足よりは━━━━━お前、誰?」
トモ君が私の腕をがっしりと掴んで自分の方に引き寄せた。
するはずはないのに、水と土と風の匂いを感じる。
「芽実ちゃんの・・・・・・・友人です」
だよね!
そういう言い方しかできない。
だけど、この人は〈友人〉じゃない。
もちろん〈恋人〉じゃないし、辛うじて〈ストーカー〉でもないと思う。
トモ君は、もっとこう、あたたかな━━━━━
「友人?・・・へえ」
明らかに侮蔑のこもった目で真幸はトモ君を見下ろした。
背の高い真幸の視線はごく平均的な身長のトモ君の頭に振りおろされている。
けれど、いつも頼りなげな猫背のトモ君は、少しもひるまなかった。
「芽実ちゃんは僕と約束してるので」
「じゃ、その約束はキャンセルになったんだよ。芽実、行こう」
真幸は私がついて行くと疑っていない。
自分が私に対して愛情のかけらもないことや、私がそれをどう感じるかという当たり前のことが、彼には思い至らないのだ。
その歪みが怖くて離れた。
私を引き寄せているトモ君の手は緩まない。
さっきまでは声も出なかった。
東京を離れるときも何も言えなかった。
だけど今、腕に感じる温かさが私を助けてくれている。
「私は真幸とは行かない」
「ん?どうした?何言ってるの?」
「もう真幸に愛情は感じない。あなたと離れたいから会社も辞めたの。よりを戻したいなんて思うはずない。二度と会いたくない。・・・触られたくない」
さすがに目を見て言う意気地はなかった。
でも、お腹に力を入れて言い切った。
「もう私を見かけても声はかけないで。私もそうするから。さようなら。━━━━━行こう」
逆にトモ君の腕を引いて、何か言われる前に逃げ出した。



