会場となったホテルを飛び出し、タクシーを探してキョロキョロする私に、
「芽実ちゃん!」
と声がかかった。
は?なんで?
きらびやかなネオンと車のライトを背景に、いつも通りくたっとした格好のトモ君が立っていた。
声には出なかったはずだけど、私の考えはきちんと彼に伝わったらしい。
「招待状忘れて行ったでしょう?小田切さんがね、教えてくれたんだ。前の会社関係の結婚式だから、もしかしたら嫌な思いするんじゃないかって」
美弥子さん・・・またしても個人情報を。
「こんなところまで、ごめん。何ともないならいいんだ。ちょっと気になって、勝手に来ただけだから」
いつもなら「このストーカー!ど変態!」と罵っているところだけど、息の根が止まる直前まで締めあげていてもおかしくないけど、ふわふわの癖毛と弱々しい笑顔を見たらものすごく安心してしまった。
憎まれ口じゃない言葉が出てこなくて、何て言葉をかけるべきか頭を悩ませていたから、現状をすっかり忘れていた。
「芽実?なんだ、俺のこと待ってたのか」
振り返るとものすごく近くに真幸が立っていた。
まずい、逃げそびれた。
体が無意識に後ずさる。
「でもその脚じゃなー。タイツはいたままじゃできないし」
さっきの恐怖が蘇ってきて体が萎縮する。
相変わらず私が真幸を拒絶するとは思っていないようだ。
最後の方はもう愛情なんてなかったけど、それでもここまで嫌悪感はなかった。
さっきのキスを思い出して吐きそうになる。



