クラクラしながらトイレを出ると、いきなり視界がグワンと揺れた。
めまいかと思ったそれは、真幸に腕を引っ張られたせいだった。
人気のない非常階段脇にグイグイ引っ張られる。
「痛いっ!ちょっと何!?」
壁に押しつけられて、状況を理解するより早く激しいキスをされる。
おえええええええ!!
何これ、気持ち悪ーーーーい!!!
なんだかわからないアルコールと、多分自分が食べたのと同じ料理の味。
あとはひたすらヌルヌルするだけだ。
一時期はとろけるようだと思っていたのは、こんなシロモノだったのか。
さりげなくて好きだった香水の匂いも、今はただ頭痛を呼び起こすだけ。
押しても叩いても真幸は離れてくれず、手が私の脚をなで回し始めた。
ゾゾゾゾっと鳥肌が立つ。
「あーやっぱり芽実の脚はいいな。なかなかここまで理想的なのが見つからないんだよ」
誉められてるのに、初めて自分の脚を呪った。
この男が好きなのは、私の脚だけだったのだ。
それでこんな目に遭わなきゃいけないの?
両手で遠慮なくスカートの中まで触られて、恐怖で声も出ない。
真幸は感触を楽しむようにすりすりとなでながら、屈み込んで頬ずりもし出した。
涙を堪えて見下ろす私の視界で、真幸の動きがピタッと止まった。
「━━━━━なんだ?」
タイツを引っ張ってまじまじと膝を観察する。
「うわー気持ちわりー。両膝こんななってんの?マジかよ。超萎える」
今までの粘着質な態度はなんだったのか、「はあーーー、もったいねー」とため息をついて離れていった。
パリッとした背中が男子トイレに消えていくのを呆然と見送る。
その間、真幸は私を一瞥もしなかった。
た、たすかった・・・。
ひどい扱いを受けたのに、もうその言葉しか浮かばなかった。
お酒の影響で脚はまだヘロヘロしているが、おかげで頭はハッキリした。
トイレから出てくる真幸と顔を合わせたくなくて、へこたれそうな脚にムチ打って外へと走った。



