そうして少し冷めてしまったミルクティーをゆっくり味わっていると、
「芽実ちゃん、大丈夫!?」
焦った様子でトモ君がバックヤードに入ってきた。
久しぶりに見る姿だな。
ちょっと感傷的な気分になったのに、口からは乾いた言葉が出てきた。
「部外者は立入禁止だよ」
「あ、俺が呼んだの。その足じゃ歩くのも大変かと思って」
店長の余計なお世話だったようだ。
「そういう場合は普通家族を呼びませんか?」
「俺の携帯に北村さんの家族の連絡先は入ってないからね」
「履歴書!」
「探すの面倒臭い」
「なんでこんなことしたの?」
私と店長のやり取りはバッサリと無視して、硬い声でトモ君が言う。
立ったまま見下ろす店長とトモ君。
イスに座らされている私。
パソコンや冷蔵庫の機械音だけが響くバックヤード。
「・・・なんかこれ、私が万引きしたみたいな状況じゃない?」
「芽実ちゃん!僕は真剣なんだけど」
「なんでって、万引きは犯罪ですよ?」
「そうだけど、ケガするまで無理することないでしょう?店ではそういう教育されてるの?」
いつになく厳しい口調のトモ君に店長があわてふためく。
「いやいや、捕まえろなんて言ってないですよ!見回りを強化したり、挨拶をするだけでも予防にはなりますから。身を守ることが一番大切って北村さんだけでなく社員・アルバイト全員に漏れなく伝えてあります!」
店長、こいつは社長でも株主でもありませんって。
「私が勝手にやったの。店長を責めるなんてお門違いだからやめてよ。それにあんたって本を作る側の人間でしょう?お礼を言われこそすれ、責められるなんて納得いかない」
「・・・例え僕の本が大量に万引きされても僕には影響ないんだけど」
「どっちかっていうと困るのは俺だな」
「あ・・・」
そうだった。万引き被害って全部書店が被るんだよね。
むしろ自分の本だったら万引きされた方がこいつにはメリットあるのか・・・?



