夢で会いたい



結局工藤さんにお説教されながら手当てしてもらった。
同じようなことを繰り返し言われているのに、心配してくれている気持ちが伝わるから嫌ではなかった。

膝の擦り傷は浅いながら広範囲に広がっていて、絆創膏ではおさまらないためガーゼを当ててもらう。

痛いには痛いけど立って歩けるし、本当に大したケガではないのに、両膝にガーゼとテープを巻かれるとものすごく大仰な姿になった。


結局乗るはずだった電車は乗り過ごしてしまい、次までは間があるなー、と思っていると、店長が缶入りのミルクティーを奢ってくれた。

「もし北村さんさえよかったら、正社員にならない?」

ちょうど一口目を飲もうとしていたところだったので、口を開けたままポカンとしてしまった。

「本店の方で一人退職するんだ。北村さんが就職活動しているのは聞いてるし、その気があるなら俺が推薦するよ」

「私、まだ入ったばかりですよ?」

「もちろん北村さんより仕事ができるアルバイトさんはもっといるけど、大事なのはそこじゃないから。北村さん、仕事は丁寧だし意欲的だし、事務の経験もあるよね?ピッタリだと思う。それにここの店舗って田舎過ぎて来たがる人いないから、希望すればここで働けると思うんだけど、どうかな?」

最近の私の態度を評価してくれたのはとても嬉しかった。
だけど、

「あの、少し考えさせていただいてもいいですか?」

正社員といってもお給料はさほどよくないだろう。
そして、ずっとここに住んでこの仕事を続けていくとは思っていなかったから、すぐには答えが出せない。

「もちろん。でも3月中には返事もらえる?」

「わかりました」