夢で会いたい




トモ君の執筆風景を目撃してから、本を見る目が変わってしまった。

一冊一冊があんな思いをして生み出されているのかと思うと、かなり重い。
雑誌も、漫画も、全部そうだ。
それらを売るなんて、プレッシャー・・・。


朝一で行われる品出しは本当に忙しくて、いつも開店に間に合うかどうかという作業だけど、最初の頃みたいに雑な扱いはできなくなっていた。
店の売り上げのためだけでなく、売れてほしいとも思うようになった。
自分は読まないのに。

お金を出して本を買うという行為は、本を作った人たちに対する愛なんだな、なんてすっかり感化されているのだった。



スカートに着替え、店用スニーカーは置きっ放しにしてヒールのあるブーツに履きかえた。
どうせ雪道だからスニーカーは無理だし。

挨拶をしてバックヤードを出ると、外は雪がちらちらと降っていて寒そうだ。

電車までまだ少し時間があるし、ホームで待つのも寒いので店内で時間をつぶすことにした。

タイツをはいていても膝が寒い。
やっぱりデニムはいて帰ろうかなー。


かわいいご祝儀袋を眺めていると、目の前を急ぎ足で男性が横切った。

あまりに年齢不詳だったから妙に印象に残る。
高校生にも見えるし、30歳を過ぎていますと言われても驚かない、そんな外見。

「何歳なのかなー?」と目で追っていると、大量に漫画を抱えたままスタスタと店を出ようとする。