夢で会いたい




「僕の作った米」発言は、相当な深さで私の生活に入り込んだ。
ご飯を食べるたびにヤツのことを思い出すようになってしまったのだ。

一日3食食べるなら3回は確実に思い出す。
それはもうほとんど生活を支配されているような感覚に近かった。

だったら食欲が落ちるのかと言えば、それは別の話。
おいしいものはおいしい。


「うーん。やっぱりおにぎりだと食べ過ぎちゃうな。2個は余裕で入るんだもん」

「北村さん、ダイエットなんて必要ないじゃないのー。こんな折れそうな腕して」

一緒に休憩を取っていた川内さんが遠慮なく私の手首を掴みながら言った。
彼女の腕は確かに、立派だ。

「ここで働くようになって筋肉付きましたよ。本重いから。ご飯とお漬け物がおいしいからついつい食べ過ぎちゃうんです。塩分糖分共に過多。それに白米って・・・如実に身になりませんか?」

「なるわね。私、夜は白米抜いてるもの。だから朝はお腹ペッコペコで余計に食べちゃう」

「食べた白米が消化されて、吸収されて、私の血となり肉となり、私の隅々まで行き渡ると思うと・・・ドキドキします」

「わかるわー。ハラハラするわよね。やっぱりカップラーメンにして正解かな」

カップラーメンはおにぎりよりまずいんじゃないかなー。


「ところで北村さん、最近彼氏は迎えに来ないのね?」

「彼氏ではありません。近所のお兄ちゃんです。仕事が忙しいみたいですよ?」

「寂しいと余計に食欲が増すよねー」

「食欲が増すかどうかはともかく、寂しくはありません。不便ではありますけど」

「米田さんは寂しいんじゃない?」

「あいつが寂しいかどうかなんてどうでもいいです」

ヤツのことを話題にされると条件反射のようにキツい言い方をしてしまう。
以前ならジョークに紛れさせるとか、否定するにしても柔らかい言い方をしていたものなのに。


あいつの作ったお米を食べて、あいつの書いた本を(たまにだけど)売る。
私の生活のいたるところに気配だけを残して、本体はムショ暮らしをしているらしい(菜穂子さん情報)。

本当に寂しくはない。
ただ、ひたすらにモヤモヤするだけ。