里芋汁だけ温め直してよそおうと思ったけど、
「お椀ってひとつしかないの?」
「ごめん。食器は全部一人分しかないんだ。誰か来るなんて考えたことなくて」
仕方がないのでもう一人分はマグカップによそった。
美弥子さんに言われた通り、最後にセリを添える。
「でーきたっ!━━━━━うわっ!!」
「あ!!」
お椀とマグカップを持って勢いよく振り返ると、ちょうどキッチンにやってきたトモ君とぶつかってしまった。
中身をぶちまけたわけではないけど、トモ君の服にはがっつり汁がかかってしまった。
「ごめん!大丈夫!?やけどしてない?」
「大丈夫、大丈夫。作業着って結構厚いから。・・・だけど、着替えてもいい?」
「もちろん、どうぞ」
「・・・・・・」
「私は全然気にならないから遠慮なく。あんたの裸見たってドキドキしないし」
「ちょっとくらいしてよ」
ブツブツいいながらも後ろを向いて、着替え出した。
おや?
「あんたって、実はすっっごい色白なんだね!」
日に当たっていない背中は、それこそ雪のように真っ白だった。
その辺の女の子よりずっと白くてキメ細かい。
ただし、外に出ている部分はチョコレートのように黒かった。
人間ラグランスリーブ!
指先で触ってみると、白いところはつるっつるのすべっすべ!黒いところはガサガサしている。
紫外線のビフォー・アフターモデルをすれば、日焼け止めが売れるかも。
「唯一って言っていいほど少ない長所がまったくの無駄なんて、あんたらしいね」
顔は黒いからよくわからなかったけど、どうやら真っ赤になっているらしい。
白い部分がほんのりピンクだ。
その赤黒い顔を珍しくゆがめて、注文をつけてきた。
「違う褒められ方がしたい」
だから褒めるところがないってば。
「無駄のない体、とか?」
「それいいね!」
「生きるのに最低限って意味だけど」
「なんだ。やっぱり嬉しくない」
口を尖らせて、本物のラグランスリーブTシャツに袖を通した。



