「災害も犯罪もないんだから『自殺さえしなければ長生きできます!』ってセールスするのはどうかな?あーでも病院が不足してるなー。医療の充実はちょっと難しいからメンタルの安定に特化したシステムを━━━━━」
全く使う宛てのない知事への進言が、「うまく行って人口が増加しても、同時に犯罪が増加してしまう」というジレンマに突き当たって無惨に砕け散った頃、美弥子さんが大きな紙袋をドサッと目の前に置いた。
「何これ?」
「こっちが里芋汁。こっちのタッパーにきざんだセリがはいってるから、食べる直前に入れてね。こっちは鶏肉のからあげと卵焼き。檸檬も添えてあるからね。で、こっちはおにぎり。具は鮭と梅干しと━━━━━」
「美弥子さん!今日運動会だっけ?」
「町内運動会は芽実ちゃんがここに来る前に終わったよ」
「ジョークだったんだけど、本当にあるんだ町内運動会・・・。それはいいとして、一体なんのためのお弁当なの?」
「トモ君に届けてあげて。私はこれからライブだから戻りは深夜(といっても日付をまたぐことはない)になると思う。芽実ちゃんもお昼ご飯は一緒に食べてきてね。ちゃんと二人分あるから」
「なんで!?」
「なんでって、いつも送り迎えしてもらってるんだから当たり前でしょう?トモ君が好きでやってるって言っても、相応のお返しをするのが礼儀ってものだよ」
もっともです。
でも返す言葉はあります。
「いつも美弥子さんが晩ご飯をごちそうしてるじゃない」
「芽実ちゃんはなーんにもしてないでしょ?届けるくらいしてあげてもいいんじゃないの?」
「・・・今度、何かお礼を用意します」
「それはそれとして、今日はこれを届けてね。トモ君にはもう芽実ちゃんが行くって連絡しておいたから」
ソツもぬかりも、血も涙もない。



