夢で会いたい


「あの、この人の本って面白いんですか?」

素直な疑問として聞いてみた。
本人に聞くことじゃないし、私の周りで彼の本を読んだ人なんて参考にならなかったから。
(ちなみに近所のご婦人方で読んだ人の感想は「上手に書けてたよ~」という小学生の作文を誉める時と一緒のものだった)

「『面白い』という言い方の作品じゃないですね。まず情景がとても美しくて、最後まで一貫して美しいのに、読み終えたあとにひどい歪みを感じるんです。景色の美しさが鬱屈した感情を呼び起こす、というか。とにかく心に突き刺さってくるんです!『蕪の中』も『金色野菜』も全部読みました!」

もう最後の方は私ではなくトモ君に向かっていた。

噛みつきそうなほど身を乗り出す中島さんに、トモ君の方はのけ反っている。

ふーん。やっぱり暗いのか。
今度お客様に聞かれることがあったらそう答えよう。