夢で会いたい

「トモ君がどうしたの?」

「今日会った。・・・あと、この前車が脱輪した時助けてもらった」

美弥子さんが乙女のように目を輝かせる。

「トモ君はいい男だよー。運命の出会いかもね」

ポリポリポリポリッ!!
乙女チックな発言をお漬け物を噛む音でかき消そうとする。

「菜穂子さんはお漬け物が上手だね。こっちの方が運命の出会いだよ。もう離れられない」

「トモ君はモテるよ」

この辺りの婦人会でのことだろうと聞き流す。
美弥子さんはその考えを読みとったらしく付け足した。

「若い子からもモテるのよ」

「も」ってことは、お年寄りからモテるのは確からしい。

「若い独身男性が少ないからじゃない?」


この町の独身男性の多くは若くない。
若い男性は既婚が多い。
「若い」と「独身」のベン図が重なる部分は、きっと目を凝らさなければ見えないほど小さいに違いない。

美弥子さんは深いため息をつきつつ、お漬け物を食べる手は休めない。

「芽実ちゃんがなんであんな失恋をしたのかわかった気がする。つくづく男を見る目がないんだね」

傷口に塩をすり込むこと遠慮がない。
私でお漬け物をつくるつもり?

「直近ではつまづいたけど、いい恋愛もたくさんしたよ」

美弥子さんの好みを押しつけられても困る。

「トモ君もねー、いい年なんだからそろそろ身を固めたらいいのに。草食系なのかしらねー。仕事も不安定だから真柴さんも困ってるみたい。もったいないわねー」

この辺はまだまだ結婚が早い。
〈トモ君〉とやらもせっつかれて大変だろうなー。


もう会うこともないだろうと、私は彼に深い同情を寄せた。

ここが東京や私が生まれた市ではないことを忘れていたのだ。