書店名の入ったブックカバーを折るも、それすらストックを置くスペースがいっぱいになってしまった。
「北村さん、今日はまだ暇だから店内を整頓しながら書籍の場所や種類を覚えてもらおうかな。もう少ししたらまたレジに戻ってもらうね」
工藤さんはそう言って、埃取りのモップを手渡してきた。
「わかりました。行ってきます」
店内を反時計回りに回ろうと、カウンターの右側にある文具コーナーへ向かった。
この店の文具コーナーはほとんど雑貨屋だ。
かわいいメモ帳や付箋、レターセット、ご祝儀袋、なぜか手ぬぐいやストラップ類もあって見ていて楽しいけど、実はコピー用紙やファイル、鉛筆などは置いていない。
そういう基本的なものはスーパーの文具コーナーで買えるから、という理由らしい。
続いて、漫画、専門書、文庫、ハードカバーの本、参考書、絵本、雑誌・・・大体の位置は把握したけど、具体的に○○の本、と指定されると探せない。
これだけ膨大な本をひとつひとつ覚えられるわけがない、と思いきや、工藤さんなんかはさすがにわかるのだ。
店内にあるパソコンで検索すると棚まではわかるが、棚のどこにあるかまではわからない。
でも工藤さんは「はいはい、それはこっちに移動してますよー」とパソコンではわからないことまでわかってしまう。
こういうことは経験だから仕方ない。
今の数分では到底無理だ。
工藤さんが本好きかというと、決してそんなことはないらしい。
「本なんて、娘の買ってきたファッション誌か息子の漫画くらいしか見ないわよー。あ、あと美容院で女性週刊誌をたまに見るくらい」とのこと。
他のアルバイトでも漫画や雑誌を読む人はいるけど、活字の本を好んで読む人は店長くらいだとか。
かく言う私も本は読まない。
漫画もほとんど読まない。
ファッション誌は必要に迫られてたまに買っていたけど、好んで読むものではなかった。



