<< 頼 side >>

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───コンコンッ


「頼〜、入るよ?」



夜。


自分の部屋のベッドの上で寛いでいた俺は、部屋のドアをノックする音に動きを止めた。


すぐに涼の呑気な声が聞こえて、ドアがガチャッと開く。

ノックの意味あんのか?ってくらいノックしてからドアが開くまで早くて、思わず笑ってしまう。


「なんか用?」


部屋に入ってきた涼に顔を向ければ、手にはフリーザーバックやら紙袋やらを抱えている。



「おすそ分けに来たんだけど、どう?」



「俺一人じゃさすがに胃もたれ」なんて、涼がちらつかせたフリーザーバックの中に、ぼんやりクッキーのようなものが見えて


あぁ、なるほど。と全てを察した。


モテる男はこれだから困る。
誰にでもいい顔するからこんなことになるんだろ?自業自得だ。


そう思ってから、もう一度涼の手元へと視線を向ける。


……軽く10個はあるだろう袋の中、そのどれを見ても花のものはない。


俺のも、航のも。
カラーワイヤータイが巻かれた透明の袋だった。


さすがに涼のだけ特別仕様なんてこと、ねぇよな?