「涼くん!これ、今日の実習で作ったクッキーなんだけど、もらってくれるかな!」
完全に頭の中を美和子ちゃんと航のことで詰め尽くしていた私は、背中で聞こえた可愛らしい女の子の声にゾッとする。
……そ、そうだ!クッキー!
勢いよく振り向けば、そこにはアイドル顔負けの笑顔を張り付けたまま、数人のクラスメイトに囲まれている涼くん。
もちろん、女子ばっかり。
「え、いいの?ありがとう」
フワッと笑って、女の子一人一人から丁寧にクッキーを受け取った涼くんを見て
あぁ、私もあの中の1人になるんだろうな〜って思うと、すでに悲しい。
まだ渡せてすらないくせに、大勢の中の1人になんてなりたくないと思っている図々しさ。
我ながらすごいよ、花。
無事、クッキーを渡すというミッションをこなした女子たちは涼くんに笑顔でバイバイしたあと「よかったー」だの、「めっちゃ眼福〜」だの言いながら去っていく。
そう言うのは、せめて本人に聞こえないところまで行ってから言うか、心の中に留めときなよ。


