<< 花 side >>

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頼くんから涼くんの天然に振り回されるべからず……と言われてから早1週間。



涼くんの言動や行動に気をつける必要もないくらい、私と涼くんは今まで同様、あまり話す機会もなければ接点もない。


同じクラスで、いつも女の子に囲まれている涼くんを、遠くからぼんやり眺める日々。


やっぱり、髪を切ったことに触れてくれたのも、『可愛い』って言葉も全部、涼くんには挨拶みたいなもので


そこに特別な何かがあるわけじゃないんだって、改めて思い知らされた。


……いや、分かってたんだけどさ!



「何してんの?ほら、行くよ」

「あ、待って……!」



エプロンと三角巾を握りしめたまま、スマホとにらめっこしていた私に、首をかしげた美和子ちゃんはスタスタと教室を出ていく。


待って、おいてかないでよ〜!


私たちのクラスの次の授業は家庭科。
今日作るのはアーモンドクッキー。


「もちろん、花はあげるんでしょ?」

「……え?」