「俺はさ、ずっとロングが1番だって信じて疑わなかったんだけど」

「……けど?」


涼の言葉に、嫌な予感が俺を襲う。

いや、まさかな?
そう思い込もうとすればするほど、ドキドキと心臓が変な音を立てて騒ぎ出す。


「今日、三津谷がさ?髪、切ってて」



───ドクンッ



この時点で、あぁ……やっぱなって。

涼はいつもそうだ。



昔から誕生日やクリスマスの欲しいものがコロコロ変わったり、食わず嫌いしていたものが次の日には大好物に変わったり、好きな女のタイプは"好きになった人"とか言う。


俺にとっては、すげぇ迷惑な性格。


そのせいで、今まで何度、涼とおもちゃを交換するハメになったか。涼の好き嫌いに俺が巻き込まれてきたことか……。


「三津谷のこと見たら、ミディアムもすっげぇ可愛いな〜って思った。女の子は絶対ロング!ってやつ、覆されたなぁって」


「頼の気持ちが分かった」なんて、嬉しそうに笑う涼にイラッとする。


別に、涼のことは嫌いじゃない。
むしろ昔からなんだかんだ兄弟仲は良好だと思ってるし、これから先も、変に争うつもりはない。


ダルいし。