頼くんの言葉を理解するなんて、難易度高いとかの話じゃない。もっと砕いて優しい言葉にして教えてくれたらそれで済む話なのに…!


『俺の言葉の意味が分かれば、もっと俺からの指示の意味も理解出来て、涼を落とすのに役立つんじゃない?』


フッと緩く笑う電話越しの頼くんに、単純な私はまんまと催眠術にかかってしまう。


「…………そ、そういうもん?」

『花ってさ、本当に涼が好きだよな』



私の質問への返事なんて返ってこなくて、代わりに聞こえる少しだけ掠れた涼くんの声を、さらに聞きづらくするように、風の音が受話器越しにゴーゴーと聞こえる。

……あ、頼くん、もう外にいるんだ。


慌てて玄関のドアを開けて、学校に向かって歩き出した私は、


「……す、好きだよ。ダメなの?」

少しだけ拗ねた口調で頼くんに対抗する。

頼くんってさ、航と同い年で私より年下のくせに、いつも主導権を握ってて、なぜか少し偉そうで。


でも、それを嫌だとかムカつくとか…思わない私ってなんだろう。

……涼くんの弟だから、かな?


『ダメだっつったら、どーすんの?』

「えっ……、」

予想もしてなかった頼くんからの言葉に、私の頭はまた必死に頼くんの言葉の意味を探す。