昔から、涼が羨ましかった。
俺にないものを何でも持ってて。

素直に欲しいものを欲しいって声に出して、ちゃんと自分のものにする涼が。



だけど───。



「さぁ?自分の顔は、自分じゃ見れないからな」





もう、羨ましがってばかりもいられない。
フッと鼻で笑って涼を見れば、一瞬涼が目を見開いたのが分かった。



「……だね。ハハッ、すっげぇ良い顔してるよ」


「なに、バカにしてんの?」


「いや、どう考えても褒めてるって!」


「……ふぅん」


「いや、何その信じてないって顔」



誰にも、たとえ涼が相手でも……。
絶対に渡したくないやつがいるから。

手を伸ばして届くなら、声に出したら届くなら、俺はもう自分の心に嘘は付かないって決めた。



だって、死んだって花だけは譲れない。
こんなに好きだから。


他の誰かじゃ到底満たせない。
どんなに近くにいても、離れればすぐにまた求めてしまう。

息するみたいに、花を探して、目で追って。




あーあ。さっきまで一緒にいたのに。
もう花が、全然足りない。