今みたいに1VS1じゃなかった。
だから、あの時は変に緊張することもなかったし、余計なことを考えることもなかった。
「……ま、俺もしてるけど」
筆箱からシャーペンを取り出して、自分のワークを広げながら頼くんがそんなことを言うから、
「え?何を?」なんて、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「は?……だから、緊張」
「う、嘘だ。頼くんは緊張しないでしょ」
だって、ここ頼くんの家だし。ましてや、頼くんが1番安心できるであろう頼くんの部屋だし。
現に、ローテーブルの向こう側であぐらをかいて私に視線だけ向ける頼くんは緊張とは程遠く見える。
「なんで花に分かるわけ?」
「だって頼くんいつもと変わらないし、それに緊張する要素が1つも」
「ある」
私の声を遮った、強い口調。
たった2文字なのに、やけに重みある言葉。
「……え?」
「俺の部屋に花がいる、ってだけで俺にとっては十分緊張する理由になるって言ってんだよ」


