「……頼くん来てるんだ」



そう口にしながらも、頼くんワードにドキッとしたことがバレないようなんかと平常心を装う。


別に頼くんとは、今日だって体育の授業の帰りにばったり会ってくだらない話をしたばかりで、久しぶりってわけでもないのに。



「そ!俺らも勉強会。ちなみに頼、今日泊まるから」

「え、泊まってくの!?」

「明日休みだし」

「……そっか。明日休みか」



さっきから、変にソワソワしてしまうのはどうして?頼くんがうちに泊まるのも初めてじゃないじゃん!



それに、頼くんは弟みたいなもんだし。
……そう!弟が1人増えるようなもん。


何も気にすることはない。

ないのに……。



「なんだよ花、さっきからおかしくね?」

「……きっと、航くんには分かんない女心と闘ってんのよ」

「え?女心?……花に女心なんてあんの?」



私そっちのけで話す2人の言葉も、私の脳が理解することはなく。ひたすら考えているのは、頼くんのこと。


そっか、今日は家に頼くんがいるんだ。

ご飯も、お風呂もうちで済ませるのかな。
夜も……壁の向こう側に、頼くん。


って、それがどうしたのよ私!!